水と共に生きる暮らし【 山水がひいてあるということ 】~家庭に届く湧水~
各家庭には 山水がひいてある という山奥の田舎暮らしのライフスタイルについて紹介したいと思います。
目次
山水がひいてあるということ
山水(やまみず)とは山から流れ出る水のことです。
山には水が湧き出る水源があり、そこから絶え間なく水が流れ出ています。
始めは小さい水源でも、いつくもの支流が谷の形に沿って集まってくると、やがて大きな一本の川を形成するようになります。
河川のもとをたどれば、水源となるいくつもの小さな支流が毛細血管のように張りめぐらされている訳なんですね。
この支流のことをぼくらは山水と呼んでいます。
この山水は田舎暮らしにとって重要な役割を果たしてくれています。
畑の水やり、田んぼの用水、補助的な生活用水など。
(ちなみに、上・下水道はちゃんと整備されていますので、この水だけで生活しているわけではありません)
この山水によって、ぼくらの生活はより豊かなものになっています。
実際、町内では少なくともぼくの知り合いの家には全て山水がひいてあります。
山奥の田舎に暮らす人たちと山水。
そこには昔から利用価値を生み出し、人々と共に歩んできた歴史がありました。
ということで、今回はこの山水について紹介していきたいと思います。
(ぼくの地区の場合)
貯水池と受水槽が設置されている
ここが、山水の貯水池と受水槽です。
貯水池はコンクリートで一旦せき止めて、小さなダムみたいになっていますね。
手前にある四角くて鉄製のふたがのっているのが受水槽です。
この中では、石や枝葉が混入しないようなつくりになっています。
貯水池に水をため、受水槽から高低差を利用して一気に水だけを下流に送り込むシンプルな構造です。
ここから約1キロ下流にある各家庭まで水が運ばれるようになっています。
黒くて太いホースが下流に向かって走っています。
ホースがむき出しですが、今のところ大きな問題はありません。
地中に埋まっていないので管理しやすい部分もあります。
しかし、これを施工するのにはかなり労力が必要だったと思います。
先人の方々の苦労を感じます。
下流にあるもう一つの受水槽です。
先ほどの太いホースがつながっていて、水が溜まるようになっています。
ここからは細いホースが枝分かれして出ています。
ホースの付け根にはタグが付いていて、各家庭の名字が入っているんですよ。
うちの水場です。
透き通っていてきれいですよね。
こうやって約1キロ先の山奥から、ホースをたどって山水が運ばれてきます。
水道とは違い、蛇口はついていないのでずっと垂れ流し状態です。
冷たくて、きれいで、豊富な資源。
ぼくらの田舎暮らしにおいて山水はなくてはならない存在です。
山水をひくのに立地がよい
この町には一本の大きな川「庄川(しょうがわ)」が中心を流れています。
この「庄川」は、源泉地である荘川町から始まり、やがて合掌づくりで有名な白川郷と五箇山を通り、富山湾まで流れ出ます。
ぼくらの住む集落というのは、ほとんどがこの「庄川」に沿ってたちならんでいます。
”川”って山と山の間の低地を流れていきますよね。
ぼくらの住む集落もこの川に沿った谷の部分にあたります。
谷というのは、いくつもの支流が流れてくるふもとに位置します。
つまり、谷にある集落からみると周りの山から支流が流れてくるので、近くに流れる支流があればそこから山水をひっぱってこれる場所になっているのです。
昔から先代の方はこの山水を有効に利用して生活してきました。
普段何気なく使っている山水ですが、この立地や自然の恩恵に感謝しなくてはいけません。
高速道路よりも上流からひいている
1999年に東海北陸自動車道の 白鳥ICー荘川IC が開通しました。
このときぼくの地区の山にも高架がかかり、山奥の森の中をぬうように道ができました。
森の中を道が通るということは、当然そこに流れる支流にも影響がでてきます。
自動車道から雨水と共に排水される水が支流に入る可能性があるからです。
そこで、自動車道を建設する計画がたちあがったときに住民との話し合いの場が設けられました。
これによって、ぼくの地区の山水の受水槽はこの自動車道の高架よりも上流に作り直されることとなります。
自動車道の排水が受水槽に入らないようにする為です。
各家庭にひいてある山水に排水が混じらないようにするには、自動車道の高架よりも上流から山水をひっぱってくればいいんですからね。
時代と共に変化していく環境の中、きれいな山水とぼくらの暮らしはこのように守られてきました。
山水のメリット~有効活用~
水道代がかからない
山水の一番のメリットは水道代がかからないことです。
垂れ流し状態なので、滞留することなく冷たい水が流入・流出されていきます。
この豊富な水源は田舎暮らしの特権ですよね。
夏にはすいかを冷やしておくのに最適です。
畑の水やり、野菜を洗う
夏場の雨が降らない時期など、山水を畑の野菜にまきます。
ホースを引っ張っていって、スプリンクラーで散布するのが楽ですね。
また、とれたての野菜を洗うのにも便利です。
新鮮な野菜を洗ってその場でかじるなんていう素敵なシチュエーションもできちゃいますよ。
トトロのさつきやメイちゃんみたいにね。
田んぼの用水
ここはぼくの地区ではありませんが、用水路を整備して田んぼへ水を供給できるようにしています。
子どもたちはよくこの水路に葉っぱを流して遊んでいます。
そういえば、子どもが一度この中に落っこちたことがありました(笑)
遊び場にしてしまってごめんなさい。
洗車
洗車をするときにも便利です。
冬場の融雪剤がついた足回りには、たっぷりと水をかけてきれいに流した方がいいですね。
サビの原因になります。
毎日、峠を越えて高山市街地まで通勤しているからけっこう汚れもつきます。
ただし凍結には要注意!
山水のデメリット~自然災害の中の維持管理~
大雨で泥が混入、凍結による損傷
デメリットは自然災害などで泥が混入したり、ホースが損傷してしまうことです。
頻繁にあるわけじゃないですが、昨年は記録的な大雨によって土砂や折れた木の枝が溜まってしまっいました。
そんなときは、地区のみんなで協力して除去作業をするしかありません。
男衆が集まって、スコップで受水槽の中の泥をかき出しました。
うちからは発電機と白熱灯を持っていって受水槽の中を照らしましたね。
また一度弁を止め、水を抜いてから作業をした方がいいので排水ポンプを持ってきた方もみえました。
田舎とはいえ、みなさん家庭にいろんなものを持ってみえます。
こういうときは地区のみんなが一致団結して作業をするので、士気が高まっていいですよね。
同じ地区にいる者同士、生活に関わるこの問題をみんなで解決するんだという熱い団結力。
作業が終わったときには大きな喜びが湧いてきます。
また、 冬にはホース内の水が凍結してホースが損傷してしまうことがあります。
このときは春になってから損傷している部分を見つけ、修繕しなければいけません。
まとめ
山奥での田舎暮らしにおいて山水は貴重な天然資源です。
近くの森の中には水源があり、そこから湧き出た水が家庭まで届けられています。
森の恵みがすぐそこにきていると思うとすごいですよね。
ぼくは当たりまえのようにこの山水を使っていましたが、ここまで整備されるのに費やした労力や時間のことまで深く考えたことがありませんでした。
今回の記事を書くにあたって、祖父から山水についての歴史を教えてもらいましたが、どれも大変だったんだなという苦労が伝わってきました。
地区のみんなが使うもの。
だからみんなで守っていかなければいけない。
先代の方が残してくれたから今の便利な生活ができているんです。
これからもずっと、未来の子どもたちの為に、このきれいな山水を残していかなければいけませんね。
あと1つ思ったことがあります。
せっかくきれいな水が豊富にあるんですから、これを今の時代に合った方法で活用できるんじゃないでしょうか。
具体的に、水がきれいな他所の地域で実地されていることと言えば、
・地酒
・ミネラルウォーター
の製造など。
その他にも、きれいな水をアピールして「そば」や「野菜」などの特産物に付加価値を加えるとか。
この辺は勉強不足なので、まずは水についての基礎知識を身につけたいなと思っています。
それではまた。