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正統派の人情芝居 【 野々俣神社 】 時代を越えて伝わる物語に酔いしれる

こんにちは。

ノリヒロです。

今回は9月3日に行われた【 野々俣神社 前夜祭 】の様子を写真メインで紹介したいと思います。

 

【日時】2019年9月3日 19時ころ開演

【場所】岐阜県高山市荘川町野々俣275 野々俣神社(ののまたじんじゃ)

 

 

そもそも荘川町の秋祭りって何をするの?っていう方はこちらをご覧ください。

 

昨日に引き続き、今日は野々俣神社の前夜祭にやってきました。

さっそく屋台をチェックしていきましょう。

コリアンドッグ屋さん。

韓国発祥の”ホットドッグ”の中に”チーズ”をぶち込んだ新感覚フードだそうです。

おいしいものは世界共通ですよね。

サメつり屋さん。

子どもたちが夢中になって景品を眺めています。

今日はじいちゃんばあちゃんからたくさんお小遣いをもらえたかな。

ハニーカステラ屋さん。

最近のお祭りの定番。プーさんかわいい。

たい焼き屋さん。

お祭りといえばこれですよね。

ぼくが子どものころは、「金山のたい焼き」が有名だったのですが、今はもう来なくなっちゃったんでしょうか。

たこ焼き屋さん。

たこ一って名前がいいですね。

遠くにいるたこを呼んでいるみたい。

屋台居酒屋さん。

なんだか哀愁があっていいですよね。

一番左のイスにすわって日本酒を飲んでみたいです。

隣のおじいちゃんと語ってみたい。

20時過ぎに芝居小屋前にやってくると、たくさんの方が集まっていました。

婦人会の方による傘踊り。

これからも民謡が受け継がれていって欲しいですね。

ちなみに、ぼくの妻のお母さんも出演していました。

さて、舞台前に移動しましょう。

野々俣神社では村芝居の前に、この「三番叟(さんばそう)」が演じられます。

日本古来の伝統芸能がルーツになっていて、おめでたい節目に上演されるものであるようです。

足拍子を力強く踏み、軽快に舞います。

三番叟の舞は五穀豊穣を寿ぐといわれ、田畑の作物の豊作を祝福するように舞います。

さて、芝居が始まりました。

今年は「故郷の旅唄」という演題です。

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花道から悪党が登場。

さっきまでの穏やかな団子屋の場面から、不穏な空気に展開していきます。

中心で腕を組んでいるのが悪代官。

ちなみに、ぼくの妻の兄です(現実の話)

「おきぬ」というヒロインをめぐって争いが繰り広げられます。

悪代官と笹子屋の弟(主役)が「おきぬ」を嫁に狙っている三角関係。

弟は、無理やり連れて行こうとする悪代官から「おきぬ」を守ります。

ところが、弟は自分の命を守るがゆえに悪代官の子分の1人を殺してしまうことに。

由緒ある笹子屋の家系から “人殺し” がでたと巷で噂になれば、店の存続に関わる大問題。

兄から縁切り・勘当を言い渡されます。

母親との別れの場面。

言葉とは裏腹に固くつなぎ合う手が心情を表現しています。

一人で旅に出た弟は、待ち受けていた悪党たちに命を狙われます。

そこに、助けに入ったのが通りすがりの心ある親分。

弟はこの親分に弟子入りすることになります。

一方、弟が出て行ってしまったあとの笹子屋の中では、家族の関係が悪化します。

母親は旅に出た弟のことが気がかりで何をするにも上の空。

そんな母親のことが兄は気に入りません。

入れたお茶が熱いといって、湯飲みのお茶をかけるなど母親にきつく当たるようになります。

遠くに旅立った弟を思い嘆く名シーン。

まじで泣けてきます。

ちなみに、この方は男性なんですが、おそらく現代の荘川において実力ナンバー1の演技力を持ってみえる方。

どうしてこのような人の心を打つ芝居ができるんでしょう。

数年後にふと弟が帰ってきます。

やくざに身を染め、変わり果てた弟の姿。

それでも母親の息子に対する愛情はかわりません。

心から喜び出迎えます。

しかし、兄が黙っていません。

久々に再会した兄弟は反発しあい、一触即発の状況に陥ります。

そこへ飛び込んでくる「おきぬ」の身が悪党に捕われた知らせ。

兄は妻である「おきぬ」を助けるため、否応がなしに剣術の優れた弟へ助けを懇願します。

弟は親分の下で鍛えられ、かなりの剣豪になっていました。

もう昔のような姿ではありません。

悪党どもを切りまくり、次から次へと退治していきます。

まるで旅立ったばかりの時に、助けてもらった通りすがりの親分のように。

殺陣中のキメのシーン。

お客さんにここが見せどころだということを誇張するために、怒号をあげながらぴたりと静止します。

見ている人は思わず息をのむ瞬間。

ぼくはいつも鳥肌がたち、胸にぐっとこみ上げるものを感じます。

かたをつけた後、弟にかけよる母親。

兄はこれをきっかけに改心し、今までの傲慢な態度を心から詫びます。

そして、ここで兄にとって母親は実の産みの親ではないことが明かされます。

自分とは血のつながっていない母とその連れ子の弟。

兄は本当の親子である母と弟に対してずっと嫉妬し、意地悪をしていたのです。

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家族の関係は修復したものの、世間体としては弟は勘当され、旅に出た身。

今となってはここが自分が帰る場所ではないことを弟は悟っていました。

「みなさま、御免なすって!」

別れの言葉を叫びます。

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壮大な別れのシーン。

笹子屋との別れ。

産みの親との別れ。

ここで共に育てられた兄との別れ。

幼きころから恋心を寄せていた「おきぬ」との別れ。

大切な故郷を後にすることに弟の心は揺れ動きます。

でも、辛気臭え涙はいらねぇ。

花道を駆け抜けいきます。

弟は故郷を想いながらも、義理のある親分と共に旅を続ける決意をしたのでした。

 

カンカン(拍子木)

 

シャー(幕引き)

 

わー(大歓声)

 

終わり。

 

ということで、今回は 野々俣神社 前夜祭 の様子をお届けしました。

16歳~56歳という厚みのある年齢層で正当派の人情芝居を見せてくれました。

ベテランの方が多く、若連中ではなくて “大若連中” なんて自虐的に呼んでいるのが面白いところ。

でも、それだけ人生経験の豊富な方々が芝居に打ち込んでいるので、そりゃあもう上手なはずです。

 

はるか昔に作られ演じ続けてきた物語。

兄弟間の決裂や、母親のわが子に対する深い愛情。

それが時代を超えた今でもぼくの心に響きます。

ぼくが生きてきた人生なんてわずか30年あまりですが、自分の中で経験してきた似たような場面と共鳴して、感情が高ぶります。

母親にきつく当たってしまう場面や、刀を振り回して敵を成敗したりするような場面。

見ていた観客はそれぞれ自分の人生に置き換えて、想い巡らせるものがあったことでしょう。

現代まで伝承され続いている伝統行事には、形式にとらわれずその根底には人々の心を打つ "情け" が体現されています。

荘川の人たちはきっと、普段はうまく言葉で伝えられない "情け" というものを 芝居 を通して表現することが好きなんだと思います。

そんな村芝居に人々は魅せられ、そして今後も子どもたちの世代に残していきたいと思うのでしょう。

 

伝統として続いてきたこの祭りには、人が人のことを想う "人情" という霊魂が祀られてきたのかもしれませんね。

 

9月1日から3夜連続で行われた前夜祭もここでひと段落。

お次は14日にある「荘川神社」の前夜祭です。

荘川神社の若連中たちは毎晩練習に励んでいますよ。

今まで紹介してきた3つの前夜祭のように、みなさんの心に響くものを目指しています。

 

期待に応えられるような芝居をお見せできるようにがんばりたいと思います。 

 

あんまり期待されてないかもしれないけど(笑)

 

 

それではまた。