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秋の風物詩 【 荘川神社 】 役者側の一日をご紹介します ~舞台裏も公開~

(2019/11/2 更新)

 

こんにちは。

ノリヒロです。

今回は9月14日に行われた【 荘川神社 前夜祭 】について紹介したいと思います。

 

ぼくはこの前夜祭に役者として参加していたんですが、今年も相変わらず大変な一日となりました。

会場の準備、業者の送迎、緊張しながらの演出。

なにせ、若連中20名ほどでほぼ全ての運営をしているんですからね。

終わった後はくたくたになります。

ということで、今回は観客席からの様子ではなく、役者側の舞台裏の様子をメインで紹介したいと思います。

 

目次

 

荘川神社 前夜祭 】の日時・場所

 

【日時】2019年9月14日 19時ころ開演

【場所】岐阜県高山市荘川町中畑 荘川神社(しょうかわじんじゃ)

  

 

そもそも荘川町の秋祭りって何をするの?という方はこちらをご覧ください。

 

 7:30 神社に集合

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9月14日。

天気予報は晴れ。

今日もいい天気になりそうです。

荘川神社若連中は7:30に神社に集合。

まずは昨晩の飲んだ後の片付けや、舞台裏の整理をします。

それから観客席にオレンジ色のシートを引きます。

観客席にはイスも座布団もありません。

この上に敷物をひいて座るだけです。

観客は良い位置で観覧しようとするならば、あらかじめいい位置に場所取りをしておかなければいけません。

このあと、ここで壮絶な場所取り合戦が始まりますよー。

 

ちなみに、すでに中央に場所がとってある所は「市長」と「今年の主役を演じる方のご家族」の席です。

これは主役を演じる方のご家族の特権ですね。

 

 8:00 場所取りスタート! 

観客席の方へ行くと、こんな立て看板が。

席の場所を取るのは8:00からと決まっています。 

それより前に席を取ることは出来ません。

荘川町内の奥様方たちが集まってきました。

時刻はもうすぐ8時。

さあ、いよいよ場所取りが始まります!

 

 

<before>

 

  ↓   ↓   ↓

 

<after>

はい、あっという間に埋まってしまいました。

 

この後、

・テントの本張り

・カツラ、衣装、化粧を担当してくださる業者のお迎え

・その他細かい作業

などを行い一時解散します。

 

しかし、受付に待機するのと音響業者の搬入手伝いがあるので、誰かは会場にいなくてはいけません。

若連中の役者以外の役員が会場に残ります。

 

14:00 みんな集合 カツラ合わせ開始

「ういっす!」

一時解散した後にみんな集まってきました。

ここで役者が順番にカツラ合わせをします。

ちゃんと頭の大きさに合うかどうかを確認します。

 

しかし、開演は夜です。

日が高いうちは割とのんびりしています。

音響業者のセッティングもOK!

「チェッ、チェッ」「ヘーツー、ヘーツー」

業者によるマイクチェックの声が聞こえてきます。

 

15:30 化粧開始

早く出演する人から化粧をしてもらいます。

化粧をした後は、飲食をするのにも化粧が落ちないように気を使わなければいけません。

ストローでビールを飲む姿もちらほら。

今回、中日新聞の記者の方も特別に出演して頂きました。

化粧をした顔で何やら真面目にパソコン画面に打ちこんでいます。

なんと、後日発行された中日新聞に記事が載っていました。

あの時もしっかり仕事をなされていたんですね。

取り方の役お見事でしたよ。

横田記者ありがとうございました!

 

18:00 カツラ・衣装着付け開始

衣装とカツラを着付けしてもらいます。

役者はあらかじめ短いパッチを履いて、お腹にさらしを巻いておきます。

これは衣装が汚れないようにするためです。

みんな着付けを順番に待っているんですが、日が暮れるにつれだんだん緊張の色がみえはじめます。

なんだかじっとしていられないんですよね。 

 

ちなみに、今年の前夜祭には屋台が4つしか来ていませんでした。

 

・たい焼き

・クレープ

・サメつり

・焼き鳥

 

近年まれにみる出店の少なさです。

3連休だったから他所のイベントにいっちゃったのかな(涙)

 

19:00 開演

氏子による神楽台が到着し、いよいよ前夜祭が開演しました。

・獅子舞

・頭取挨拶

・舞踊一部(子どもたちによる日本舞踊)

・アトラクション

この “アトラクション” というのは 若連中の役員 による催し物のことです。

村芝居の “前座” という感じで、肩の力が抜けた面白い芝居を演じます。

今年は昔ばなしの「屁ひり女房」をモチーフに話が展開していきました。

お気楽な面白い芝居なんですけど、ちゃんと自分らで台本を書いて仕上げているので見ごたえがあります。

子どもたちはくぎづけだったみたい。

そもそも若連中の役員はベテラン層の方々なので、舞台経験が豊富で芝居が上手です。

数日前にちょっと練習しただけなのに観客の笑いをかっさらっていきます。

さすがとしか言えませんね。

最後は、福袋を客席に投げるのでみんな大盛り上がり。

うちの子どもたちも福袋をGETして喜んでいましたよ。

 

20:45 村芝居 上演

今年の村芝居は「武士の本分(ほんぶん)」という演題。

一言でいうと、太宰治の作品「走れメロス」の時代劇版です。

物語の本筋は美しき友情を描いた内容に仕上がっています。

 

※ここからあらすじを書いていますが、思った以上に長くなってしまったので適度に読み飛ばしてください 

<一場> 

・舞台は江戸の 日本橋 本銀町 にある両替商「纏屋(まといや)」

・この界隈では、「纏屋」と「天満屋」の二つの両替商があった

・「纏屋」に悪党が押し入り、言いがかりをつけられるところから物語が始まる

・実はこの悪党は商売敵である「天満屋」に雇われた身であった

・主役は武士で剣術に長けた 戸沢扇太郎 という者(白い衣装を着ている)

扇太郎 は父と共に「纏屋」に預けていた将軍家の拝領品を取りにきていました

・タイミング悪くその場に居合わせてしまったばかりに、拝領品の受け渡しをしている所が悪党の目に止まってしまいます

扇太郎 は悪党の挑発を受けて刀を抜いてしまうことに

・悪党に対する「纏屋での悪態」と「戸沢家への侮辱」に勇みよく立ち向かう様子は、主役である 扇太郎 の正義感の強さが表れています

(主役は剣道部だっただけに型がしっかりとしてますね)

・そこへ、たまたま市内見回りに来ていたお奉行様が現れる

・悪党は、言い逃れるために戸沢家が拝領品を売買したという嘘の告発をする

・証拠の品もあることから、この場で奉行様より裁きが下されることに

・戸沢家(扇太郎) は拝領品を転売したという無実の罪をきせられ、纏屋と共に厳しい裁きを受けることになってしまう

扇太郎 は捕われの身となり、父は責任を取りその場にて自害をしてしまうことに

(父がそこまで責任感じていたとは・・)

 

<二場>

・場面は変わって石出帯刀の牢屋敷内

・三枚目(おちゃらけた役)の盗人役が間の抜けたことを言って場をなごませる

(おどけた演技してますが、本番前は極度に緊張してましたよ)

・きびしい拷問に意識がもうろうとする 扇太郎

・その様子を見た三枚目の盗人が心配していたわっている

・偶然にもこのとき牢屋敷の鍵番をしている者が 扇太郎 の幼馴染であった

・ 扇太郎 にとって明日には打ち首という最後の晩であった

・ここで鍵番は 扇太郎 から脱獄の頼みが言い渡される

・鍵番はしばらく「自分の職務」と「幼馴染との友情」の狭間で葛藤することとなる

(ちなみにぼくはこの鍵番の役でした)

 扇太郎 には 武士の本分(武士が本来尽くすべきつとめ)があった

・自分の命を失うことに恐れはない

・それよりも纏屋、藩主方々、戸沢家の親戚縁者に汚名を残すことだけが心残りであった

 

・鍵番は懇願する幼馴染に心が動き、必ず明日までに戻ってくることを条件に脱獄の手助けをしてしまうこととなる

 

<三場>

・場面は変わってもうひとつの両替商「天満屋」の店先

・雇われの悪党たちが昼間から酒を飲み交わしている

(ちなみに怖い顔して飲んでいるのは “どぶろく” 、食べているのは控え室にあった “サンドイッチ” です)

・先日の「纏屋」の一件が上手くいったことに慢心している様子

・商売敵であった「天満屋」の主人も上機嫌

・「天満屋」の主人はさらに「纏屋」の娘を妾にしようといちゃいちゃ絡んでいる始末

・そこへ颯爽と現れたのが牢を抜け出してきた 扇太郎 

・牢の中にいるはずの 扇太郎 が現れたことで場は大慌て

・慌てふためく悪党どもを見事なまでにばっさりと倒していきます

・そして「天満屋」の主人も成敗し、一件落着

・かと思いきや、扇太郎 には戻らねばならない場所がありました

・みなの説得を押し切って一人花道を駆け抜けていきます

・そうです、果たさなければならない幼馴染との約束があったからです

 

<四場>

・場面は変わって石出帯刀の牢屋敷内

(重々しい空気です)

・扇太郎 を脱獄させた罪に問われ、鍵番は牢屋敷内にて切腹を申し渡される

・鍵番は切腹の準備をし、取り方は介錯の一太刀を振るう寸前

・そこへ 扇太郎 が花道より駆け抜けてきます

・幼馴染である鍵番との約束を守りみごと友の命を救ったのです

・しかし、それとは引き換えに自分の処罰を受けにきたようなもの

・また牢に入り処罰の執行を待つことに

・そこへ再び現れたのがお奉行様

・事の成り行きを全て見ていたお奉行は何が正しいことなのか分かっていました

扇太郎 へ無罪の裁きを言い渡し、「纏屋」には見舞金を渡します

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・そして粋な歌を口ずさみながら花道を去っていきました

(会場の盛り上がりが最高潮のとき)

・武士の本分を果たした 扇太郎 は晴れやかに友や娘らと顔を見合わせるのでした

~めでたしめでたし~

<完>

 

(おや、牢の中にいた盗人もどさくさにまぎれて外に出てきちゃってますね)

 

深夜23時過ぎ 終演

村芝居のあとは、

 

・舞踊二部(大人による日本舞踊)

・〆の挨拶

・獅子舞

 

があって前夜祭は終演となりました。

終わったといっても若連中はこのあとすぐに後片付けをしなきゃいけません。

 

・着替えと化粧落とし

・音響機材を業者のバンに積み込む手伝い

・カツラ、衣装、刀をまとめて業者に返す

・幕を外してたたんでから業者へ返す

・小道具の片付け

・舞台、小倉、社務所内の整理

・テントなどの大掛かりなもの以外の後片付け

 

など、終わってからも充実感に浸る間もなく、怒涛の後片付けの時間がやってきます。

このときはまだみんな興奮が冷めやまぬ状態。

割とてきぱき行動できます。

 

そして、片付けがおわったら芝居小屋の中でお酒を飲み明かします。

「かんぱーい」

芝居の出来栄えがどうだったかとか、観客にうけた場面の分析など話しが絶えることはありません。

お互いをねぎらいながら一番おいしいお酒が飲めるのはこの時ですね。

場の雰囲気が良く、みんな大らかでなんでも受け入れてくれるような気がします。

しっかりと暗くなる田舎の夜。

森の中にある芝居小屋から明りがもれ、

若者たちの楽しげな笑い声がこだましていましたとさ。

めでたしめでたし。

 

 

こうして夜は更けていきました。

 

 

 

でも、ちょっと待って下さい!

 

これって 前夜祭 でしたよね・・

 

そうです 翌日が本祭 です。

 

みなさんこのあと6:30に集合してみこしを担いでいましたよ。

マジか?!

いつ寝たんだって言う感じ(笑)

寝袋を持ってきている人もいましたね。

みんな寝不足、過労でやばい。

ランナーズハイ」ならぬ「祭りハイ」状態に陥ってます。

でもまあ・・

これが祭りの醍醐味ですよね。

 

お疲れ様でした!

ということで、今回は【 荘川神社 前夜祭 】役者側の一日の様子をお届けしました。

地域の人々、芝居の師匠をはじめとして若連中が主体となって作りあげる前夜祭。

今年も無事に終えることができました。

近所の人から「良かったよ」と声をかけられるとなんだか嬉しいような恥ずかしいような。

これも田舎で暮らしているからこそ味わえる人と人との付き合い方。

飛騨の山奥にはこんな祭りがあるんだなということが、ちょっとでも多くの人に伝わってもらえたらいいなと思っています。

ちなみに、今回主役を演じてくれたのはぼくの1つ上の先輩でした。

小学生のころから足が早く、スポーツ万能。

50メートル走では誰も彼に勝てるものはいませんでした。

そんな彼も今や教員を務める1児のお父さん。

娘さんも法被を着てみこしを見にきてくれましたよ。

 

人生において自分が主役になれる場って冠婚葬祭くらいしかありませんよね。

・誕生 ・成人式 ・結婚式 ・葬式

このうち、ちゃんと生きている間に記憶に残るものって成人式と結婚式くらいです。

しかし、ここ荘川町に住んでいると ・村芝居の主役 という大舞台がやってきます。

こんな機会ってほかにはないですよね。

祭りが始まる前に、町の人からは「今年の主役は誰や? どこの息子や?」などと聞かれたりします。

それほど地域に根付いているイベントであり、現代まで受け継がれてきた伝統文化だということです。 

 

主役を務めるカッコいいお父さんの晴れ姿。

きっと、主役席から眺める娘さんの目にも光り輝いて映っていたことでしょう。

 

数年後には、娘さんもかわいいお化粧をして舞踊を踊っていると思います。

 

 

9月1日から14日にかけて行われた前夜祭もこれで終幕。

この町にもぼくら若連中にも日常が戻ってきました。

客観的に見てもこんなハードなスケジュールみんなよくやってるよなーって思います。

しかし、みんなが楽しみにしている地域の伝統文化を守っていく為。

これからもがんばっていきたいと思います。

 

ちなみに、この村芝居の様子は飛騨高山のローカルケーブルTV「 Hit net TV 」で後日放送される予定だそうです。

もし飛騨地域にお住まいでこの番組が見られる方はぜひご覧ください。

 

(追記)

放送時間が決まったようです。 

なんだか恥ずかしいですね。

 

 

 

それではまた。